スピードラン・コミュニティは奇妙な技術的現象に頭を悩ませています——スーパーファミコン(SNES)の本体が、経年劣化による性能低下とは逆に、ゲームをわずかに高速で動作させているように見えるのです。
30年後の性能向上?
この現象が明らかになったのは2024年2月、スピードランナーのアラン・セシル(@tas.bot)が「現在のSNESは1990年代のオリジナル仕様より動作が速い」と気付いたのがきっかけでした。この発見は、現存する約5000万台のSNESが『スーパーマリオワールド』や『スターフォックス』といった名作において、むしろ年々性能が向上している可能性を示唆しています。
クロック速度の謎
一見あり得ないことですが、セシルの調査では音声処理ユニット(APU)が原因と推測されています。公式仕様書ではSPC700 DSPは32,000Hzで動作するとされていますが、歴史的なデータからこの値が環境要因で変動することが判明。しかし近年の計測では、温度変化だけでは説明できない処理速度の上昇傾向が確認されています。
「143件の計測データによると、現在のSNES DSPの平均動作周波数は32,076Hz——過去のベンチマークから測定可能な上昇が見られます」とセシルは収集データを分析したBlueskyの投稿で説明しています。この値は217Hzの範囲で変動しますが、温度変化による影響は約8Hz分にすぎません。
スピードランへの影響
この発見はスピードラン競技に微妙ながら重要な影響を及ぼす可能性があります。僅かな上昇幅ではほとんどの記録に劇的な変化はありませんが、理論上は最適化されたプレイにおいて数百分の1秒を縮められるかもしれません。コミュニティでは「数十年続く記録に注釈が必要か」という議論が始まっていますが、フレーム単位の精密操作を要求する場合を除けば、その影響はごくわずかという見解が主流です。
研究が進む中で一つ明らかなのは、任天堂の34年前のゲーム機が今も驚きを与え続けていることです。ゲーム機の歴史に興味がある方は、SNESが歴代ゲーム機売上ランキングで何位に入っているかもご覧ください。